Art Avenue  友永詔三の造形
卑弥呼ー幻想””
 Erotisism of Japanese legend dance “HIMIKO”
人間を超えた死のエロチシズム
東京新聞 平成5年9月3日


 舞台中央に和紙でできた巨大な樹。上手・下手には重なり合った十数本の竹。舞台面には中央が出入り可能な白の紗幕。舞台奥、巨木の後ろには黒紗を互い違いに配した、舞台装置。
 拍子木の音と共に、天地創造をイメージさせる、小六禮次郎の美しい音楽が流れてくる。薄暗い中で凍りついたように青白く輝く、舞台上手・下手の竹に段々と光が入り、やがて中央の巨木も明るくなり、舞台一面があたかも「あかりの彫刻」(和紙を通したやわらかい光)である。これの川本周二の照明が加わり、美しくも不思議な日本的幻想の世界を創り出す。
 舞台一面が明るくなると同時に、白く大きな鳥が現れ「HIMIKO」の舞台の始まりである。
 古代日本を初めて統一したといわれているHIMIKO(卑弥呼)。彼女は一体どんな女性だったのだろう。古代史研究家や作家、多くの人々によって多彩な論争が繰り広げられているが、邪馬台国の女王で鬼道により民衆を導いたということ以外、謎に包まれている。
 巨木に花が咲き、一輪の花から少女(人形)が生まれ出る。美しい大自然の中で赤トンボや魚と伸びのび遊ぶ少女時代、滝や炎の中でシャーマンになるために厳しい修行を繰り返しながら成長し、そして女王の座につく。
 悪の大将(自然破壊、人間の心に宿る悪など、この世のすべての悪の象徴)との戦い。そして悪に打ち勝ち、世を平和に導く。一面が白の世界となり、大鳥に導かれて登場する純白のHIMIKO。平安な世界を喜びながら大鳥と舞う。すがすがしくも美しい世界である。
 やがてHIMIKOは、客席の上を宙乗りし、大空へと消え去る。舞台には、生命の尊さを象徴するように、赤い花が一輪いつまでも咲いている。
 HIMIKOを美しい裸体の少女人形から衣装を付けた等身大の人形まで数体登場させ、人間のHIMIKOや遊び仲間の少女、巫女や兵士、赤い衣装の炎の踊り手らの人間と絡ませる。呼吸をしない人形ではあるが、遣手により人間以上の表情と美しさで死のエロチシズムを発散させる。人形劇にありがちな平面的な感じを廃した立体的な構成で、人形芝居、演劇、ダンスなど、どのジャンルにも当てはまらない新しいファンタジーの世界……。自然へのやさしさを訴えながら、爽やかに吹きぬける秋風のような舞台を思い描いた。

「HIMOIKO-幻想」(構成・演出・美術=友永詔三)は、13、14日午後7時、昭和記念公園の多摩21くらしの祭典「VOICE93」会場内たまTAMAアリーナで上演。「卑弥呼幻想」は昭和58年9月15日午後7時30分、キャンプ場に特設した檜原村「光と踊りの桧原村星ステージ」で上演されている。音楽・仁科きぬ子、舞台監督・黒田昌美、レーザー光線、レーザーハープ・村上達人。出演 石川恵子、杉村由美、山田明男ほか。

(本稿は東京新聞社の許諾を得て転載しています)         PAGE TOP