ART AVENUE

友永詔三の造形 木版画 『古代夢幻想』
Woodcut Prints By Akimitsu TOMONAGA
 少女像の制作を長く続けるうちに、友永が
発想と表現の幅を拡げようと取り組んだのが木版画。彫刀の扱いに手馴れた技で板を刻み、特注の和紙に刷り上げて裏から彩色を施す。
そのためエディション(摺り部数)が少なく、
すべてが微妙に異なって一点一点がオリジナルともいえる。
 郷里・高知の四万十川や家の裏山で遊んだ幼少年期に、そこで刻まれた原風景のイメージが作品の根底にある。絵は、小学生のころ祖父に買ってもらった油絵の具で夢中になって描いていた。周囲には、大人でも油絵を描くひとはまだなかった。
 戦後の何もない時代に、農業を営む父親が友永のために作る独楽や野球のバット、チャンバラの刀などで遊んでいた。いつしか父親のナイフをこっそり持ち出して遊具を自分で作るようになっていた。釣竿や竹トンボ、ウナギ捕りの仕掛け籠などだ。
 版を刻むとき、刀にそんな当時の思いがこ
もる。木彫による少女像同様、版画でも少女
から“おんな”にうつろう過程の、ある一瞬
の極みとしての美しさを刻む。
 


木版画 『あこがれ』 72,5 X 45,5 cm
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